美味礼賛 / 海老沢泰久
美味礼賛

古い本。

辻調理師専門学校の創始者である辻静雄が、はじめて料理に携わることになる頃から、本当のフランス料理を日本に根付かせるに至るまでの半生が、伝記(ノンフィクション小説)のような感じで、分かりやすく平易な文章で綴られている。

辻さんの人となりや人生も、すごく興味深く、知る価値があるんだけど、なんといっても、この著者の構成力や取材力、文章表現力が凄まじかった。

他の著書が、スポーツノンフィクションだったり、はたまた直木賞受賞の小説だったりということを後で知って、なるほど、と、納得。

文章に、脚色っぽい表現や大げさな言い回しなどはまず見られず、難解な語彙や表現もいっさいなく、淡々と、読みやすい文章が続いていく。本読みが遅い僕でも、500ページのこの本が、何時間かで軽く読めた。ぐいぐい引き込まれて、読後どっと疲れが出た、というような微熱気味な感じでなく、平熱で、こともなげにすっと読めたという感じ。しかもとても楽しく、内容が流れるようなこともなく。

例えば料理の内容など、曖昧に書かずに全部調理の手順を記述している。そしてそれは、例えばどんな味かなどについて変な脚色をする、などという事もしないので、全てこちらの頭でその味、旨さについて判断できる。またそういった細かく書かれるべき事柄でも、常に必要最低限の客観的な描写にとどめているので、読んでいて疲れたり、苛々させられたりしない。また、もっと書いてくれ、とも思わないだけの十分な内容描写。

そういう、当たり前な部分での、寸法とバランスが、ほんとうに凄まじかった。

その後ろ側にきっとある、取材であったり、試行錯誤には、いったいどれだけのエネルギーが費やされたのだろうか。

ベタベタな表現だけれど「たとえ良い食材があっても、料理するひと次第」というのがまさにこの本だと思う。食材は勿論辻さんの半生、料理人は海老沢さん。

海老沢泰久という人はすごいなあ、と思った。(辻さんもだけど)

料理に興味あろうがなかろうが、小説が好きだろうがそうでなかろうが、中学生だろうがおじいちゃんだろうが、ある程度ものごとに知識欲を持つ、世の中のあらゆる人がきっと面白いと思う本だと思う。
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2010/02/21 | お気に入り…こと | コメント:0 | トラックバック:0____
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